報酬アップのカギは「1年契約」!?
ニュース 更新:2008.05.28(水)
なぜ「顧問料上昇事務所」と「下落事務所」に分かれるのか?
税理士が顧問先と新規に顧問契約を結ぶ際、契約期間を「1年」と定めることで何を連想するだろうか。「1年経って更新してくれなかったらどうしよう」「黙っていればずっと顧問契約を続けてくれるのに」。こんなことを考えていては、顧問報酬アップは程遠い。
「1年契約」で顧問報酬アップを実現している事例を紹介する。
税理士楢山直樹事務所(岩手県盛岡市)の楢山直樹税理士は、新規の顧問契約の際、税理士顧問契約書を締結。契約期間を決算申告期末までの1年間に定めている。
理由の一つは、契約期間の1年間を「真剣勝負」で業務に臨むため。1年後に契約を更新するか否かの選択権を顧客に委ねているのだ。1年間のサービスに顧問先が満足すれば当然更新する。契約更新は顧客満足度を知ることができる絶好の機会でもある。
そして、1年契約の大きな理由は報酬アップにある。決算申告時こそ、顧問先が会計事務所に対する満足が最高潮に達するからだ。「決算は顧問料の値上げを提案する最適なタイミングです。ここを逃していつ値上げを提案すればいいのでしょう」(楢山氏)
楢山会計では、顧問報酬の基準を原則として顧問先の年間取引高(売上高)としている。その旨を顧問契約時に詳しく説明するので、顧問先の業績が上がったら「顧問料が上がっておめでとうございます」と正々堂々と切り出せる。
ポイントは業績向上と報酬アップを連動させ、値上げの根拠を明確にしていること。顧問先には「顧問料を値上げさせられた」という被害者意識がなく「業績が上がったから値上げさせてもらった」という優越感が生まれる。会計事務所と顧問先の双方が納得するという理想の報酬アップが実現するのだ。
宮原税務会計事務所(東京都中央区)の宮原裕徳税理士も「1年契約」を基本とし、毎年契約内容の見直しを実施。楢山氏同様、顧問先の売上高に対応した顧問報酬を設定し、スムーズな報酬アップを実現している。
もう一点、特筆すべきことは、事務所の強みを顧問先にアピールし、相手にニーズがあるかどうかを見極めていることだ。
宮原氏の得意分野は資金調達と企業再編。どちらも近年の中小企業にとって大きなニーズがある。資金調達では銀行との交渉や、銀行の格付けに合った決算書の作成、企業再編では会社の分社や子会社連結納税への取り組みなど、高付加価値サービスを施せる。
事務所の強みと顧問先のニーズが合致すれば、顧問先の業績は上がる。すると「会計事務所のおかげで業績が伸びた」という認識が高まり、顧問報酬の値上げが自然な流れになるのだ。
「顧問料アップの最大のポイントは付加価値をどこまでつけられるか。ちょっと視野を広げるだけで、会計事務所ができるサービスの範囲は拡大します。高付加価値のサービスには、必ずニーズがあるでしょう」(宮原氏)
顧客との関係構築が報酬アップの大前提
顧問報酬アップの成功事例には共通点がある。それは「顧客との関係構築」に多くの時間を割いていることだ。もっとも、こうした取り組みは、あからさまに報酬アップを目的としているわけではない。それは、顧客のニーズにこたえるためであり、企業の経営に貢献しようと考える税理士の積極的な取り組みの一環ともいえる。
逆に「顧問料が下落傾向にある」という事務所にも共通点がある。それは、従来通りに税務会計サービスを提供しており「付加価値サービスも必要」と、唐突に「経営計画をつくりませんか」「相続対策をやりましょう」と顧客に提案している点だ。顧客のニーズを考える前にサービスを提案している典型的な例だろう。
顧客との関係を構築するということは、会計事務所が提供する価値を理解してもらうこと。例えば、楢山氏は顧問契約時に個別業務報酬規定の中身を一つひとつ説明し、「会計事務所だからこそできること」を提案。「どんなときに楢山会計を利用すればいいのか」をイメージさせている。これで会計事務所が提供したいサービスと顧問先のニーズとのミスマッチがなくなり、顧客満足度が高まり、報酬も上がる。
今回の事例は、報酬アップが関係構築の副産物としてついてきた格好になる。各事務所は「顧客のニーズを正確につかんで対応することが顧客満足の向上につながる」という考えの下、アクションを起こしている。報酬アップ実現のカギはこの点にあるといえよう。
ほかにもある報酬アップ事例
弊社から発売されたCD教材「会計事務所の報酬の決め方」で講師を務める木村哲三公認会計士・税理士は「タイムチャージで顧客が納得できる報酬を提案できる」と教材を通じて説いている
時間管理による進捗状況のチェックや、業務内容の見直しにより、効率的な事務所経営を実現。時間管理に基づいた適正なデータと報酬価格を顧問先に明示し、交渉の円滑化を実現している。
相続税の報酬規定を作成し、請求をスムーズにしているのは須崎勇夫税理士。弊社から発売中のDVD教材「これなら迷わない! 相続税報酬の請求ノウハウ」で講師を務め、相続人の立場で考えて報酬をいただくことの大切さを伝えている。
相続税を申告する際、相続人の関心事は「いくら報酬を払うのか」。一方、税理士も遺産総額がわからないと報酬額を告げられないというジレンマにある。
そこで須崎氏はオリジナルの相続税報酬規定を作成。「相続にあたっての業務説明」「申告報酬の算定方法」「相続税業務報酬計算書」「委任契約書」の4段階を追って業務を進行。相続人の不安を取り除き、納得して報酬を払ってもらう仕組みを構築している。
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